2013年1月30日水曜日

映画館に行くこと、映画を観ること。


映画『ニッポンの、みせものやさん』東京での公開終了まであと2日。

今回は、僕らの映画を上映してくださっている新宿K's cinemaさん(以下、ケイズシネマ)について僕が感じたことを独白(毒吐く?)します。




ご存知!新宿昭和館の跡地に建てられた商業ビルに入っているケイズシネマはまわりの商業ビルや雑居ビルとは一線を画す小綺麗なつくりです。が、さりげなく歴史を背負っているところやさりげなく劇場看板をアピールしているところが外見の綺麗さよりも素敵です。僕は予備校→大学→映画館でのアルバイト時代に渋谷のミニシアターに足繁く通っていました。今でこそ「東映の任侠ものと実録ものが大好物!」なんて言っていますが、当時は新宿昭和館に行ったことすらなくて、昭和館がなくなった後に任侠ものが流れた中野武蔵野ホールに通い始めていた頃でした。ロビーがなく場内の左右の壁に所狭しと並べられたチラシを取るのに気まずい思いをしたり、映画が終わってもいびきをかいて寝ているおじさんに驚かされたり、そんな中野武蔵野ホールで『博奕打ち 総長賭博』を観られたのが今となってはいい思い出です。中野武蔵野ホールで働いていた方々が今はケイズシネマのスタッフとして働かれていると聞いて何だか安心してしまいます。新宿昭和館→中野武蔵野ホール→新宿K's cinemaという時代の流れがあるんです。






さて、ケイズシネマのロビーは大きな窓、白い壁、茶色い絨毯で構成されていてとても居心地がよい空間です。上映が始まる度に劇場スタッフの方々はテーブルセットをふきんで拭いたり、贈られてきたお花の鉢に水を注したり、チラシのラックを並べ替えたりしています。僕が映画館でバイトをしていた時は、上映が始まると同時に読みかけのマンガのページをめくり出したり、お客さんが来ないと分かるや否やヨダレを垂らしてカウンターで居眠りをしたりしておりました。内緒ですが、この居心地のよい空間を求めてお昼休みにお弁当を食べに来る会社員らしき方もいるそうです。万が一、この静かなロビーに居場所を求めてくる人がいて居眠りをしてしまっても、あの中野武蔵野ホール出身のスタッフの方々であれば、そっと毛布を掛けてくれるか閉館時間を見計らって静かに起こしてくれるでしょう。「ふーん、額縁まで飾ってあるのね」と壁際の版画を見ると、そこには「シュヴァンクマイエル」のシグネチャーが!何て凝った空間演出!さりげなさ過ぎます!!それと、ケイズシネマのロビーには喫煙コーナーが仕切ってあります。喫煙所すらない映画館が増える中、ケイズシネマは大人の対応でお客さんをもてなしてくれます。




そして、メインの劇場です。ビルのテナントに入っているミニシアターのいくつかは天井が低く上映中に観客が立ち上がるとスクリーンに人影が映ってしまってそれがまた面白いのですが、さすがはケイズシネマ!天井と映写窓が高くて鑑賞環境バツグンです!この天井の高さが昔ながらの映画館を連想させてくれます。また『ニッポンの、みせものやさん』を編集段階から観てくれていた友人の何人かは「特に音が聴きやすくなった」と言ってくれますが、それはなぜなら、技師に頼んで映画を整音してもらったことはもちろん、ケイズシネマの音響システムが優れているからに間違いありません。僕が思っていたよりも大音量で映画を上映してくれているのにも感謝しています。





いよいよ、映画ファンあこがれの映写室です。今回は劇場スタッフの方にお願いして映写室に入らせてもらいました。35mm映写機のデカさと薄いフィルムのはかなさにクラクラします。やっぱりフィルムキャメラで撮られた映画はフィルム上映で!DV(デジタルビデオ)カメラで撮られた映画は撮影時の圧縮方式のままDVテープで!『ニッポンの、みせものやさん』はDVカメラで撮ったものをDVCAMテープ(簡単に言うとDVを書き出せる長時間テープ)に書き出してプロジェクター上映してもらっています。最近、昔の映画を観に行って「デジタルリマスター」なる文字をみつけガッカリすることがしばしばあります。古いフィルムを復元してデータ化し観られるようにしてくれている人たちのお仕事には敬意を払っているつもりですが「フィルムだったらやっぱりニュープリントでしょ!」とのんきな映画ファンの僕は思ってしまいます。とはいえ、僕も8ミリフィルムで撮った映像をDVに変換して映画本編に使っていますが。時代の趨勢なので仕方がないことですが、せめてフィルムかデジタルか、選択肢だけは残しておいてもらいたいと思います。



ロビーでは、今後ケイズシネマで上映される映画のポスターが展示してあるのを目にします。『ニッポンの、みせものやさん』公開前に上映されていた七里圭監督のリバイバル上映が間もなく始まります。七里監督は以前、このブログにも登場してくれました。ケイズシネマはこのように作家とその作品を大切にしてくれる映画館です。僕の映画『ソレイユのこどもたち』も2013年中にケイズシネマで公開されることが決定しています!



長々と独白を続けてきましたが、言いたいことはただ一つ!

ぜひ映画『ニッポンの、みせものやさん』を封切り劇場の新宿K's cinemaに観に来てください!

小さい規模の映画ですが僕自身は映画館で上映されることを念頭にこの作品をつくってきました。映画は映画館のスクリーン上で初めてその姿を現す、とも思っています。配給の方と劇場の方の働きかけで幸運にもケイズシネマで僕らの映画を公開してもらえたことを心から感謝しています。元々、渋谷育ちを自負する僕は新宿のケイズシネマには通っていませんでした。この2ヶ月弱ケイズシネマに通ってみて「こういう映画館もあるんだな、いいな」っていう発見がいくつもありました。映画ってやっぱり映画館に行ったり、スクリーンで観たり、そういう経験が大事なんだなって思います。

残すところ、あと2日。

「始まるよ〜さあ始まるよ!」

新宿K's cinemaでお待ちしております。


映画『ニッポンの、みせものやさん』監督 奥谷洋一郎


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